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リファレンス(Appインターフェイスと設定)

このガイドでは、Bolt インターフェイスのリスナー関数、リスナー関数の引数、初期化オプション、エラーについて詳しく説明します。⚡入門ガイドをまだ完了していない場合は、先にそちらで Bolt for JavaScript アプリ開発の基本を確認しておきましょう。


リスナー関数

Slack アプリは通常、Slack からのイベント情報を受け取ったり、それに応答を返したりします。受信するイベントは 1 つの場合もあれば、多数の場合もあります。例えば、Events API のイベント(アプリに関連するリンクが共有されたときなど)や、ユーザーがアプリのショートカットを実行するイベントを受け取ったりします。Slack からのリクエストの種類に応じて、それぞれ異なるメソッドが用意されています。これらのメソッドに、それらのイベントを処理したり応答を返したりするためのリスナー関数を渡します。

メソッド

以下の表は、現在提供しているリスナー関数を渡すためのメソッドの一覧です。これらのメソッドを使って、Slack から送信された各種のイベントを処理します。各メソッドの一般的な設定は、まずイベントを判別するためのパラメーターがあり、リスナー関数がそれに続く形になっています。イベント判定のためのパラメーターとは、以下の説明にある、特定の callback_id やメッセージ中の部分一致の文字列を指定する部分などのことです。これにより、リスナー関数が処理するイベントを条件に合致するものだけに絞り込むことができます。

メソッド説明
app.event(eventType, fn);Events API のイベントをリッスンします。eventType は、処理対象のイベントを指定するための文字列 です。この値は、Slackアプリの設定画面でサブスクライブの設定がされている必要があります。
app.message([pattern ,] fn);message イベントのリッスンに特化した、便利なメソッドです。pattern パラメーターには、部分一致させる文字列、または正規表現を指定します。これによって処理対象のメッセージを判別します。
app.action(actionId, fn);Block Kit エレメントから送信される action イベントをリッスンします。このイベントにはユーザーのボタン操作、メニュー選択、日付ピッカーの操作などがあります。actionId は文字列型で、アプリがビュー内に含めたブロックエレメントに指定した一意の action_id の値と一致する必要があります。ここでいう「ビュー」とは、メッセージ、モーダル、アプリのホームタブのことを指します。アクションエレメントを input ブロックに配置した場合はイベントがトリガーされないことに注意してください。
app.shortcut(callbackId, fn);グローバルショートカットまたはメッセージショートカットの呼び出しをリッスンします。callbackId は文字列または正規表現で、アプリの設定で指定したショートカットの callback_id にマッチする必要があります。
app.view(callbackId, fn);view_submission イベントと view_closed イベントをリッスンします。view_submission イベントは、アプリが開いたモーダルでユーザーがデータ送信の操作をしたときに発生します。view_closed イベントは、ユーザーがデータ送信を実行せずにモーダルを閉じたときに発生します。
app.step(workflowStep)WorkflowStep のインスタンスに渡されたコールバックを使用して、ワークフローステップイベントのリッスンと応答を行います。コールバックには editsaveexecute の 3 種類があります。ワークフローステップについて詳しくは、ドキュメントを参照してください。
app.command(commandName, fn);Slash コマンドの呼び出しをリッスンします。commandName は文字列型で、アプリの設定で指定したスラッシュコマンドと一致する必要があります。スラッシュコマンドの名前では / を最初に配置します(例 : /helpdesk)。
app.options(actionId, fn);外部データソースを使用するセレクトメニューなどから送られる選択肢読み込みのリクエストをリッスンします。使う機会は多くありませんが、app.action と混同しないようにしましょう。actionId は文字列型で、アプリがビュー内に外部データソースを使用するセレクトメニューを含めるときに指定したaction_id と一致する必要があります。

制約オブジェクト

一部のメソッドでは、さまざまな制約オブジェクトを指定することができます。制約オブジェクトを使用すると、リスナー関数で扱うイベントをさらに絞り込んだり、特定のケースに対応することができます。制約オブジェクトは、上で説明した識別子の代わりとしてメソッドに渡すことができます。さまざまな制約オブジェクトとそれを渡せるメソッドを以下の表にまとめます。

メソッドオプション詳細
app.action(constraints, fn)block_id, action_id, callback_id, (,type)action_id だけでなく、他の制約指定でもリッスンします。block_id は、エレメントの親ブロックの ID です。callback_id は、ビューの初期化時に指定したビューの ID です(モーダルに配置したアクションエレメントのみで使用できます)。type を指定することで、blocks内のアクションのみを処理するか、あるいは attachments 内のアクションのみなのかを選択できます。type に block_actions を指定すると、blocks内のアクションエレメントのみを処理します。interactive_message を指定すると、旧来の attachments 内のインタラクティブなアクションのみを処理します。
app.shortcut(constraints, fn)type, callback_id対象のショートカットの種類を指定できます。typeshortcutを指定するとグローバルショートカットmessage_actionの場合はメッセージショートカット)となります。callbackId には文字列か正規表現を指定します。
app.view(constraints, fn)type, callback_idtype には view_closed または view_submission のいずれかを指定します。ここで指定した種別のイベントの場合のみリスナー関数にイベントが渡されます。callback_id は、アプリでモーダルを開く際に設定したビューの callback_id です。
app.options(constraints, fn)block_id, action_id, callback_id必須ではない設定として、action_id の他に block_idcallback_id もリッスンする条件に追加することができます。callback_id はモーダル内の options エレメントを処理する場合にのみ指定できます。

リスナー関数の引数

リスナー関数がアクセスできる引数は、リスナー関数が渡されるメソッドによって決まります。以下の表は、これらの引数の説明です。この表は、それぞれの引数とそれにアクセスできるメソッドの詳細をカバーします。

引数説明
payloadすべてのリスナー
saymessage, event, action, command
ackaction, shortcut, view, command, options
clientすべてのリスナー
respondaction, shortcut, view, command
contextすべてのリスナー
bodyすべてのリスナー

body と payload について

payloadbody の構造は、API サイトで説明しています。

リスナーミドルウェアとの違い

リスナーミドルウェアは、多くのリスナー関数で利用するロジックを実装したい場合に使用します(全てのリスナーでは使わないようなケースで)。リスナーミドルウェアは、上で説明したリスナー関数と同じ引数を持ちますが、唯一異なるのは next() 関数を持っている点です。この関数は、実行のチェインを切らないために、必ず呼び出される必要があります。リスナーミドルウェアについて詳しくは、ドキュメントを参照してください。

初期化オプション

Bolt には、アプリをカスタマイズするためのさまざまな初期化オプションが用意されています。主なオプションには、Bolt アプリのオプションとレシーバーのオプションの 2 種類があります。レシーバーのオプションは、アプリで使用するレシーバーによって異なります。デフォルトの HTTPReceiver では以下のレシーバーオプションが利用できます(カスタムのレシーバーを使わない限りはこれらが利用できます)。

レシーバーオプション

HTTPReceiver オプションは、Bolt App オプションと同様に、App のコンストラクターに渡すことができます。渡したオプションは、初期化の際に HTTPReceiver のインスタンスに渡されます。

オプション説明
signingSecretアプリの設定の「Basic Information」から取得した 文字列。受信イベントが Slack から送信されたものであることを検証するために使用されます。
endpointsレシーバーが Slack からの受信リクエストをリッスンするエンドポイントを指定する文字列または オブジェクト。現在、オブジェクトに指定できるキーはラベルとしての任意の文字列のみで、値にはカスタムのエンドポイントを指定します(例 : /myapp/events)。デフォルトでは /slack/events というエンドポイントにすべてのイベントが送信されます。
processBeforeResponseイベントに対して即座に確認の応答を返すかどうかを指定する真偽値。リクエストへの応答が完了するとリスナーはただちに終了してしまうため、FaaS プラットフォームでアプリを実行する場合に有用な設定です。 true に設定すると早期終了を防ぐためにハンドラーが実行されるまで応答を返すのを遅らせます。デフォルトは false です。
clientIdアプリの設定で指定した、クライアントの ID を示す文字列。OAuth の設定を行うために必要です
clientSecretアプリの設定で指定した、クライアントのシークレットキーを示す 文字列。OAuth の設定を行うために必要です
stateSecretCSRF 攻撃を防ぐために OAuth の設定時に渡すことができる、推奨のパラメーター(文字列)。
installationStoreOAuth の設定時に、インストールデータの保存・取得・削除の手段を定義します。fetchInstallationstoreInstallationdeleteInstallation という 3 つのメソッドが含まれます。デフォルトの installationStore はインメモリストアです。
scopesアプリが OAuth のプロセスの中でアクセス許可を求めるスコープのリスト。
installerOptionsデフォルトの OAuth サポートをカスタマイズする場合に指定するオブジェクト(必須ではない)。詳しくは、OAuth のドキュメントを参照してください。
dispatchErrorHandler受信リクエストが想定しないパスへのリクエストを受信したときに実行されるエラーハンドラー。 詳細はエラー処理のドキュメントを参照してください。
processEventErrorHandlerイベントの処理中に例外がスローされたときに実行されるエラーハンドラー。 詳細はドキュメントを参照してください。
unhandledRequestHandlerSlack からのリクエストが Bolt アプリによって確認(ack())されなかったときに実行されるエラーハンドラー。 詳細はドキュメントを参照してください。
unhandledRequestTimeoutMillisリクエストが受信されてから unhandledRequestHandler が実行されるまでの待機時間(ミリ秒単位)。 デフォルトは 3001 です。 詳細はドキュメントを参照してください。
signatureVerificationBolt が Slack からの受信リクエストの署名を検証するかどうかを指定する真偽値。 デフォルトは true です。

App オプション

App オプションは、App のコンストラクターに渡します。receiver 引数が設定されない場合 App コンストラクターは上記の receiver オプションを受け取り、それを用いて socketMode の値に応じて HttpReceiver または SocketModeReceiver を初期化します。

オプション説明
receiverReceiver のインスタンス。受信イベントのパースとその処理を行います。Receiver インターフェイスに準拠して、init(app)start()stop()を持つ必要があります。receiver について詳しくは、ドキュメントを参照してください。
agentオプションの HTTP エージェント。プロキシのサポートを設定する場合に使用します。カスタムの agent について詳しくは、Node Slack SDK のドキュメントを参照してください。
clientTls設定必須ではない文字列。HTTP クライアントリクエストにカスタムの TLS を設定する場合に指定します。"pfx""key""passphrase""cert""ca" のいずれかを指定します。
convoStoreステートに関連する会話のデータを設定・取得するためのデータストア実装。set() で会話のステートを設定し、get() で取得します。デフォルトでは、アプリはインメモリのストアを利用できます。詳細とサンプルについては、ドキュメントを参照してください。
tokenアプリの設定(「Settings」>「Install App」)で指定した 文字列。Web API の呼び出しに必要です。authorizeorgAuthorizeやOAuth 設定を使用する場合には指定しないでください。
botIdauthorize が定義されていない場合に限り指定できる、設定必須ではないbotId(例 :B12345)。ボットトークンの ID で、アプリ自身によって送信されたメッセージを無視するために使用されます。xoxb トークンがアプリに渡されている場合、アプリは auth.test メソッドを呼び出して、この値を自動的に取得します。
botUserIdauthorize が定義されていない場合に限り指定できる、設定必須ではないbotUserIdbotId とは異なり、ボットユーザーに関連づけられたユーザー ID を指します。ダイレクトメンションを識別するために使用します。xoxb トークンがアプリに渡されている場合、アプリは auth.test メソッドを呼び出して、この値を自動的に取得します。
authorize複数のチームでのインストールをサポートする場合に使用する関数。どのトークンが受信イベントに関連づけられているかを判断するのに使用します。authorize 関数に渡される元データには、場合によって userIdconversationIdenterpriseIdteamIdisEnterpriseInstall が含まれます(受信イベントによって異なります)。authorize 関数は、botTokenbotIdbotUserId、または userTokenを返します。ビルトインの OAuth サポートを使用する場合、authorize 関数は自動的に作成されるため、自分で渡す必要はありません。authorize 関数について詳しくは、こちらを参照してください。
loggerビルトインのロガーの代わりにカスタムのロガーを渡すためのオプション。ロガーには特定のメソッドが実装されている必要があります。これには Logger インターフェイスで定義されている setLevel(level:LogLevel)getLevel()setName(name: string)debug(...msgs: any\[])info(...msgs: any\[])warn(...msgs: any\[])error(...msgs: any\[]) があります。ログ出力の詳細については、ドキュメントを参照してください。
logLevel出力するログのレベルを指定するオプション。LogLevel の出力に含まれる情報のレベルには、重要度の低い順から高い順に DEBUGINFOWARNERROR があります。デフォルトの logLevelINFO に設定されています。ログ出力の詳細については、ドキュメントを参照してください。
extendedErrorHandler真偽値を指定するオプションで、 true に設定するとさらなるリクエストのコンテキスト情報を含んだオブジェクトがグローバルエラーハンドラーに渡されます。 バージョン 3.8.0 から利用することができます。 デフォルトは false です。 より高度なエラーの処理に関する詳細は API ドキュメントを参照してください。
ignoreSelfアプリ自身から発信されたメッセージをミドルウェアの関数で無視するかどうかを指定する真偽値。botId が必要です。デフォルトは true です。
clientOptions.slackApiUrlSlack Web API で使用するエンドポイントをカスタマイズできます。これが使用されるのはほとんどがテスト用途です。
socketMode真偽値を指定するオプションで、true に設定するとアプリはソケットモードで起動します。ソケットモードは WebSocket のコネクションを通して Slack からのデータを受信する機能です。デフォルトは false です。
developerModeデベロッパーモードを有効にする真偽値です。 true に設定したとき、logLevelDEBUGsocketModetrue に自動的に設定されます。しかし、 これらの二つのプロパティを明示的に設定した場合、それらの設定が developerMode による設定よりも優先されます。さらに、デバッグをしやすくするためのカスタムの OAuth エラーハンドラーも提供されます。また、全ての Slack からのリクエストのボディがログ出力されるため、トークンのようなセンシティブな情報がログに含まれる可能性があります。デフォルトは false です。
deferInitializationアプリの初期化を遅延させる真偽値です。有効にすると非同期の App#init() メソッドを手動で呼び出す必要があります。 また init() メソッドは App#start() を実行する前に呼び出さなければなりません。 デフォルトは false です。
signatureVerificationBoltが着信リクエストでSlackの署名を検証する必要があるかどうかを決定するブール値。 デフォルトはtrueです。

Bolt のclientは Node Slack SDKWebClient のインスタンスです。そのため、Node Slack SDK のドキュメントも合わせて参照すると、開発時の理解に役立つでしょう。

フレームワークのエラー

Bolt では、さまざまなエラーが定義されています。これらにはより具体的なコンテキスト情報が含まるため、エラーのハンドリングが行いやすくなるでしょう。以下は、すべてのエラーコードを網羅しているわけではありませんが、開発中に目にすると思われるものを取り上げたエラーコードの一覧です。

エラーコード詳細
AppInitializationError無効な初期化オプションが渡されたことを示します。原因として、署名シークレットが渡されていないことや、競合するオプションが指定されたことなどが考えられます(例 : tokenauthorize の両方を同時に指定することはできない)。original プロパティで詳細を確認できます。このエラーがスローされるのは、アプリのコンストラクターで行われる初期化時のみです。
AuthorizationErrorインストール情報が取得できなかった、またはパースできなかったときにのみスローされるエラーです。このエラーは、ビルトインの OAuth サポートを使用しているときに発生する可能性があります。また、独自の authorize 関数を作成するときに、このエラーをインポートして使用することができます。
ContextMissingPropertyErrorcontext オブジェクトに必要な情報が不足しているときにスローされるエラーです(例 : ignoreSelftrue に設定したのに botUserId または botId が含まれていない)。不足しているプロパティは、missingProperty プロパティで確認できます。
ReceiverMultipleAckErrorReceiver 内で、すでに確認が済んでいるリクエストに対してアプリがさらに ack() を呼んだ場合にスローされるエラーです。現在、デフォルトの HTTPReceiver でのみ使用されます。
ReceiverAuthenticityErrorアプリのリクエストの署名が検証できないときにスローされるエラーです。このエラーには、失敗した理由を示す情報が含まれます(例 : タイムスタンプが有効でない、ヘッダーに抜けがある、署名シークレットが有効でない)。
MultipleListenerError単一のイベントに対して複数のリスナーでの処理中に複数のエラーが発生した場合にスローされるエラーです。個々のエラーを配列に収めた originals プロパティを持ちます。
WorkflowStepInitializationError新しい WorkflowStep をインスタンス化する際に、設定オプションが無効な場合、または不足している場合にスローされるエラーです。原因として、callback_id が指定されていない、または設定オブジェクトが指定されていないことが考えられます。ワークフローステップについて詳しくは、ドキュメントを参照してください。
UnknownErrorフレームワーク内でスローされる、特定のエラーコードを持たないエラーです。original プロパティで詳細を確認できます。

errors.ts のコードで、エラー定義の部分とコンストラクターの部分を読み、参考にしてみてください。

クライアント側のエラー

Bolt では、Slack API の呼び出しのため WebClient をインポートしています。クライアントで API 呼び出しを行う際に目にすると思われるエラーを以下に示します。より詳しい内容は、Web API のドキュメントを参照してください。クライアントのエラーをハンドリングする際、data プロパティの body で詳しい情報を確認できます。

エラーコード詳細
PlatformErrorSlack API の呼び出し中に何らかの異常が発生したことを示すエラー。data プロパティを持ちます。
RequestErrorリクエストが送信できなかったことを示すエラー。ネットワーク接続が利用できないことなどが原因として考えられます。original プロパティで詳細を確認できます。
RateLimitedError短時間で送信したリクエストが多すぎることを示すエラー。retryAfter プロパティで、再送信まで待機する必要のある秒数を確認できます。WebClient は、デフォルトでレート制限エラーのハンドリングを行います。詳しくはドキュメントを参照してください
HTTPErrorHTTP レスポンスに通常は想定されないステータスコードが設定されていたことを示すエラー。Web API が返す HTTP ステータスコードは、通常 200(エラー時を含む)または 429(レート制限時)のみです。